審議なしで強行!PLC小委員会の横暴(お詫びと訂正あり)
お詫びと訂正
この記事中に重大な間違いがありました。「パブリックコメントがある」と書きましたが、これは間違いで、実際にはパブリックコメントはなく「意見聴取」だけのようです。不正確な記事を書いたことをお詫びします。申し訳ありませんでした。
なおこの訂正と、意見聴取についての詳細を
高速電力線通信への意見陳述は誰でも可能
にまとめています。恐縮ですが、こちらもご覧下さい。
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当サイトではPLC・高速電力線通信の記事を取り上げています。「コンセントでネット接続 今秋実現か?」などと報道されている高速電力線通信ですが、多くの問題点があります。高速電力線通信の概要は以下の通りです。
・100V電源ラインを通信ラインとして使うネットワーク接続
・日本では屋内配線のみ。光やADSLのライバルではない。対抗馬は無線LAN
・ネット家電の室内配線用として電気メーカーが推進
・電波公害になる可能性がとても高い
今までの流れをまとめ
高速電力線通信は、何のシールドもない(保護されていない)ただの2本線(電源ケーブル)に、短波帯をつかって信号を流す方式です。そのため大量の妨害波をまきちらします。電波公害となるシステムなのです(参考:Preserve Spectrum against PLC/BPL interferences ! 短波放送に、有害な混信の懸念-ラジオNIKKEI)。
高速電力線通信をスタートさせている国としては、スペイン、アメリカなどがありますが、採算が取れない、アマチュア無線に妨害を与えるなどの問題で、普及は事実上ストップしている状態です(参考:HF-PLC Watching Site CISPRとは?高速電力線通信の実現性は?)。
またスピードは200Mbpsとされていますが、これは実験室レベルの環境での話で、実際には理想的に環境でも数十Mbps、延長コンセントでタコ足配線すれば数Mbpsまで落ち込むことは間違いありません。まったくもって「高速」ではないのです(PLCはテーブルタップで大減衰~松下電工の高速電力線通信研究結果)。
日本では屋内でのPLC・高速電力線通信を検討中で、現在総務省の委員会によって審議が行われています。昨年からの動きをまとめると、
2005年1月 短波帯に影響を与えるか調べる総務省研究会開始
2005年10月 研究会が紛糾したままで結論出ず。座長提案の案のままパブリックコメントに
2005年12月 パブリックコメント結果公表。反対意見・改善意見をほぼ無視
2006年1月 総務省情報通信審議会へ。CISPR委員会にかけられる
2006年2月 CISPR委員会で日程決定
2006年3月6日 第2回CISPR委員会・PLC小委員会開催
ちょっとややこしいのですが、昨年12月まで行われた研究会は、短波帯への妨害だけを検討した研究会。そこが出した案が、そのまま総務省の諮問機関である情報通信審議会に回され、傘下のCISPR委員会、さらにその下のPLC小委員会で審議されています。
審議なしで規制値案が出される
第2回のPLC小委員会は3月6日に行われました。ITProとHF-PLC WatchingSiteでレポートされています。
この委員会を傍聴されたohishiさんが、HF-PLC WatchingSiteで書かれたリポートを一部抜粋で紹介します。これによれば、ほとんど審議らしいものなしで規制値・測定方法案を通してしまったとのこと(詳しくはHF-PLC WatchingSiteをご覧下さい)。
昨日3月6日に総務省で開催されたCISPR委員会(第17回)及び高速電力線搬送通信設備小委員会(第2回)を傍聴してきました。第1回の同小委員会は2月13日に開かれ設置趣旨などを説明しただけだったのですが,なんと同小委員会はもう終了です。ろくな意見交換,議論は一切なし。CISPR委員会がごく少数の老人による独裁体制になっていることを理解しました。次のステップは,意見聴取だそうです。
実は,第1回の小委員会で座長である杉浦氏が,何らの意見交換も行わないまま「杉浦を含む4人で報告案を検討する」と宣言し,今回その案を出して,例のごとく,採決してしまったのです。案と言ってもこれまでのCISPR22規格をそのままコピーしただけ。もちろんこの狙いは「これまで存在している規格なのだから問題あるのか?」ということ。
しかし今回の小委員会ではNHKからの委員が,PLCの変調方式によっては中波帯への妨害の生じ方が異なるはずなので,この案で良いのかどうか確認するべきだ,などと食い下がっていました。これに対し,PLC-Jが抱えるM大学のT教授は「問題があるというのなら具体的に示せ」と反論。それまで会議中に惰眠をむさぼっていたんですが・・・。
結果として、委員会の主任である東北大学の杉浦行教授ら4人が規制値・測定方法案骨子を作り、そのまま審議も修正もなく、通ってしまったのです。NHK技術局の河合直樹氏が問題ありとの発言をしているにも関わらず、無視する形で強行です。ひどいもんです。
ITProによる3月6日配布の資料。電力線通信の測定方法の模式図。
いつの審議でも同じメンツ!
そもそも総務省のPLC関連の審議では、いっつも同じメンバーが審議を進めています。トップは東北大学の杉浦行教授、測定値の技術的要件をまとめているのが電気通信大学の上芳夫教授。このコンビが、研究会・審議会をリードして進めています。
構成メンバーも同じで、松下電器、東京電力、電波産業会、それに武蔵工業大学の徳田正満教授。ここに日本アマチュア無線連盟の委員が混じっているだけです。同じメンバーでずっとやっているんですから、何が変わるわけでもなく、研究会と同じものがチャンチャンで通っちゃうわけです。実にいい加減なもんですな。
再びパブリックコメントへ!
PLC小委員会はたった2回で終了しました。今後のスケジュールは以下の通りです。
●4月18日 規制値案に対するパブリックコメント募集許容値と測定法の意見聴取
●5月下旬? パブリックコメントに基づきCISPR委員会で審議
●6月? 規制値案を情報通信審議会へ
こんな流れです。もう一度パブリックコメントがあります。4月に入ってからだと思われますが、みなさん目を離さずにチェックしてください。パブリックコメントはなく、意見聴取が4月18日に行われます。
前回のパブリックコメントに対して研究会は、
「本研究会では、これまで短波帯の無線利用との共存条件として許容値と測定法を検討してきました。今後、帯域外発射やスプリアス等についても検討する必要があると考えます。」
と明確に答えています。
つまりまだまだ検討すべき点がある、と総務省が自ら言っています。この点を放置したままで電力線通信を実現することはできません。あなたもパブリックコメントへの準備をしてください。
お詫びと訂正
この記事中に重大な間違いがありました。「パブリックコメントがある」と書きましたが、これは間違いで、実際にはパブリックコメントはなく「意見聴取」だけのようです。不正確な記事を書いたことをお詫びします。申し訳ありませんでした。
なおこの訂正と、意見聴取についての詳細を
高速電力線通信への意見陳述は誰でも可能
にまとめています。恐縮ですが、こちらもご覧下さい。