NECの電力線通信モデム。理想環境で30Mbpsも商品化は未定(WPCリポート)
WPC TOKYO 2006 高速電力線通信は不発?
2006年10月18日に東京ビックサイトで行われたWPC TOKYO 2006に行ってきました。写真を最後にまとめているので、ぜひご覧ください。
PLCとは、100Vの電源ラインを使ったネット配線のこと。高速電力線通信とも呼ばれています。日本では屋内の配線に限り、10月4日に総務省の省令上ではGOサインが出ています。
その直後のCEATECで、各社がPLCシステムを派手に展示しました。そのためもあってか、WPCには高速電力線通信の業界団体であるPLC-Jが出展しておらず、松下、日立、三菱といった大手メーカーも参加なし。東芝は出展していましたが、PLCはノータッチです。なんだか寂しい状況です。
結果としてNECブース(NECパーソナルプロダクツ)の片隅にPLCシステムの展示があるだけでした(見落としあったらご指摘ください)。WPCのキャッチコピーが「PC+デジタルが実現する新しいライフスタイル」なのに、家庭向けの電力線通信展示が貧弱なことが気にかかります。
NECブースの展示は、一般家庭向けのデモ。CEATECでの展示が企業向けで、かつ無線LANや有線LANを合わせた総合システムだったのに比べ、PLC一本のコンシューマー向けのデモであったことが注目されます。
相変わらずツイストペアケーブル。30Mbpsとは言うが…
NECのデモは、CEATECでの各社と同じように、100Vの電源ラインに「より線(ツイストペアケーブル)」を使っています。ツイストペアにすることで、漏洩が少なくなってスピードも上がります。実際の家庭ではあり得ないもので、理想的な実験環境を作っての展示です。
説明の方に「どのくらいスピードが出るんですか?」と聞くと、
「スピードはまだわからないんですよ。10月4日に決まったばかりですので、その条件に合わせたものをこれから実証します。そのため、家庭でスピードは、まだわかりません」
とのこと。ものすごく正直なお答えで、二桁は出るんでしょ?と振ってみても「わかりません」と答えていました。
この実験環境でのスピードは?と聞くと、
「ここでは30Mbpsは出ているんですが、家庭で使った場合に、どのくらいになるのかはわかりません」
と『スピード未定』であることを強調していました。
PLC商品化のメドは??? ヤル気があるのか、ないのか…
ではいつごろ実現されるのか?との質問に対しては、
「ハッキリお答えできないんです。まだ実証の段階なので、いつになるのかは明言できません」
とのこと。なんだか「わからない」を連発で、質問するほうも途方に暮れてしまう感じです。価格についても未定で、言質を取れず。また利用シーンについても、あまり具体的な説明はなく、「無線LANが届かない部屋で…」「ネット家電での活用」とありきたりなものでした。
これって本当にヤル気があるの?という印象で、NECが考える将来像もよく見えません。
パソコンとネットの祭典であるはずのWPCで、「期待」の高速電力線通信がこんな状況では、実際に家庭に出回るのは相当先でしょう。商品化はかなり将来のことになりそうです。
行政訴訟へ。PLCにストップがかかるか?
商品化の前に、PLCにストップがかかるかもしれません。
ブログへのコメントで、かぜさんより「PLCに対する行政訴訟が準備中である」という情報をいただきました。詳しくは月間ファイブナイン「PLC導入に対し行政訴訟を提起しよう!」、「PLC訴訟の原告募集」(JH3YKV’s Amateur Radio News)にまとめられています。
武蔵工大教授で環境総合研究所長の青山貞一氏、アマチュア無線の月刊誌を発行されている草野利一氏を中心として、電力線通信の差し止めを求める行政訴訟を準備をされているようです。集団訴訟を検討されており、原告として参加される方を募集されています。ぜひ上のリンクをご覧ください。
写真でチェック!NECの電力線通信 一般家庭向けデモ
筆者のアホな突っ込みを交えながら、写真でリポートします。
▲WPC2006でのNECブースのPLC・電力線通信のデモ。メイン電源を取るところに、でっかいトランスがあるんですが、これ何ですか?なんの効果があるんでしょうか。どなたかご教授お願いします。
▲説明のベースはこのパネル一枚のみ。資料もこのパネルをまんまコピーしたもので、ヤル気ないなあ、って感じです。「ボタン一つでセキュリティを含む設定ができる」とのことだが、そんな安易な設定で運用してほしくないなあ…。
▲以前よりは小型化しているものの、まだまだ「モデムっぽい」PLC子機側モデム。実際の製品は、これより小さくなるとは説明していた。価格を聞いたら「逆にいくらだったら買いますか?」と逆質問されてしまった。
▲こちらはPLC親機モデムだが、子機とまったく一緒と思われる。
▲こんなモデムが実際に使われるとしたら邪魔になりそう…。内蔵できる製品が出てこないと、普及は難しいのでは?
▲批判の声を気にしてか、ツイストペアである旨を表記。揚げ足とっていいですか?「模擬的に」ってのは、本物を真似て、という意味です。だからツイストペアという、家庭ではあり得ないものに使っちゃだめですよ。「模擬的」と「ツイストペア」の文意が、ぜんぜーん繋がっておりませーん(性格悪くてごめんなさい)。
▲背面は100V(PLC)と、LANケーブルだけのシンプルな作り。100Vのラインは個人ではいじれないので、しっかり作って欲しいところですね。
参考出展であり「商品化は未定」
配布資料(パネルのコピー)には注意書きがあって、「本展示コーナーのPLCアダプタは、参考出展であり商品化は未定です」とのこと。
NECはもしかしたらCEATECで発表した企業向けの電力線通信の方を重視するのかもしれません。今回のデモは、コンシューマー向けだったわけですが、GOサインが出た商品とは思えないほど「わからない」づくしのモノでした。
松下や住友電工あたりは、PLCに本気で取り組みそうですが、他の各社はもしかしたら様子見になるのかもしれません。中途半端な技術に商品化しちゃうと、赤字が出ることは必至ですから…。