PLC製品登場「壁コンセント直結」が前提に(PLC発表会前編)
取材メモはこちら→PLCアダプター発表会速報メモ
後編はこちら→松下PLCは「屋外へ垂れ流し」「障害窓口ナシ」(電力線通信アダプター発表会後編)
PLCアダプター無料配布のリリースはこちら→PLCアダプターをモニターに無料配布:電力系プロバイダ
日本初となるPLC高速電力線通信の製品が、松下電器からデビューしました。10月4日の省令改正で電力線通信が解禁になってからわずか1か月半。そして12月9日には早くも店頭に並びます。
なんという早ワザでしょう。松下電器は周到な準備を整えていたようで、すでに商品パッケージも用意されていました。まずは発表された製品のアウトラインから行きましょう。
2台セットで2万円強。個人ユーザ向けに販売
発売されるPLCアダプター(モデム)は2種類あります。そのほかに、PLC用にフィルターを搭載した電源タップなどが発売されます。
PLCアダプタースタートパック「BL-PA100KT」
PLCアダプターの親機(マスターアダプター)と子機(ターミナルアダプター)を1台ずつ、計2台のPLCアダプターが入った製品です。価格はオープンですが、店頭では2万円前後になるだろうとのコメントがありました。アメリカでは199ドルで発売されており、ほぼそれと同じ線に合わせてきています。月産台数は3,000台を予定。
PLCを使うためには最低限、この2台パックを購入する必要があります。
PLC増設用アダプター「BL-PA100」
こちらは増設用のPLCアダプター。子機(ターミナルアダプター)として増設するものです。オープン価格ですが「店頭では13,000円前後になるのではないか」とのコメントがありました。
写真はスタートパックの子機ですが、増設用のものとまったく同じです。親機・子機の違いはソフトウェア上だけのものかもしれません。
PLCタップ(松下電工 2007年3月発売予定)
松下電工が発売するPLCアダプター内蔵の電源タップ。コンセントに差し込むだけでPLCが使えるようになる製品です。ノイズフィルターを内蔵しており、家電製品からのノイズの減らす効果あり。こちらのほうが実用性は高そうです。ACコンセントが3個口付いています。
またこの他に、イーサネットのハブにもなるPLCアダプターも参考出品されていました。
PLC内蔵ACアダプター(松下電工 参考出品)
こちらはルーターやADSLモデムなどのACアダプターに、PLCアダプターを内蔵したもの。光やADSLの機器の電源として使い、同時にPLCアダプターとして利用できます。PLC最大の敵であるACアダプターからのノイズをできるだけ減らし、かつコンセント直差しでスピードを確保しようとしう製品でしょう。参考出品で発売時期はわかりません。
組み込み型PLCモジュール
またHD-PLC方式の組み込み型モジュールも発表されました。春に登場すると思われる各社のPLCアダプターに搭載されるほか、PLC内蔵家電製品にも投入されることになるでしょう。
チップは松下開発のもので、32ビットRISCプロセッサによるもの。またノイズ抑制のアナログ部分を一体化しているため、そのまま家電製品に組み込むだけでPLCに接続できます。3次元実装モジュールにより、従来のものより面積を40%削減しているとのことでした。
公称スピードは55Mbpsも、実際の環境では????
さて問題のスピードですが、次のように発表されました。
●理論上の最高通信速度(PHY速度):190Mbps
●UDPでの最高速度:80Mbps(通信評価装置によるもの)
●TCPでの最高速度:55Mbps(FTP速度によるもの)
たぶん新聞やニュースサイトでは「190Mbps」と報道されるでしょうが、実際にはこんなスピードは出ません。インターネットで実際に使うには、どんなにがんばってもTCP速度の「55Mbps」が限界となります。
しかも55Mbpsというのは公称であり、ベストエフォートの数字です。ADSLのコマーシャルが40Mbpsと言いながら、実際には数Mbpsしか出ないのと同じで、その家庭の環境や接続方法によってスピードは落ちてしまうのです。
ちなみに10月のCEATECでは、「最大45Mbps」と発表していました。これが10Mbpsアップしたのは「ネットワークソフトウェアの改善による(パナソニックコミュニケーションズのカテゴリーオーナー・小林英次氏)」ものだそうです。
ハイビジョン伝送をアピール。でも実際には難しそう
発表会の会場では、例によってハイビジョンの伝送デモが行われていました。今回の製品は型式指定を受けたもので、今までの研究設備とは異なり、実際のサービスに合わせたものです。
現状でのハイビジョン伝送は、おおむね24Mbpsが必要です。PLCで24Mbpsを出せますよ、というアピールになります。松下は以前から「トリプルプレイ」をうたっています。トリプルプレイとは、ハイビジョン+パソコンでのネット接続+IP電話が同時にスムーズに使えますよ、という理想形です。PLCでこの「トリプルプレイ」ができることを、発表会でも盛んに宣伝していました。
壁コンセント直結を推奨。テーブルタップだと大幅ダウン?
では本当にトリプルプレイは可能なのでしょうか。発表会の会場では、当然ながらできているわけですが、実際の家庭では様々なスピードダウンの要因があります。
それについて説明員の方に聞いたところ、
「パナソニックの実験(一軒家)では、家庭内の壁コンセントのうち、90%で30Mbps(トリプルプレイができるスピード)が出ている」とのこと。
テーブルタップを入れるとどうなるのか?という質問に対しては「それは実験していないのでわかりません」と答えていました。
つまりハイビジョン伝送を楽しむには「壁コンセント直結」が原則となるわけです。これは説明員の方が繰り返し発言していたほか、先ほどの小林英次氏も「できるだけ壁コンセント直結をお客様にお願いしたい」とコメントしています。
壁コンセント直結でないとスピードが出ない、どうしても延長や分岐が必要なら、松下電工のPLCタップを買ってください、ということのようです。
通常の家庭の壁コンセントは2個口しかありません。PLCアダプターを直結すると、残りは1個。この1個でパソコン・モニター・AV機器などの電源を供給することになります。かなり不自然で無理がありそうです。